同友館発行の「企業診断ニュース」内で不定期連載中の「診断士の書評」コーナー。2014年6月号は、「観光ビジネス未来白書 2014年版」を担当いたしました。
「観光ビジネス未来白書 2014年版」加藤弘治 編著 同友館
観光立国ニッポンを重点分野の一つと位置づけるアベノミクスの成長戦略と、一昨年来の円安が追い風となり、国内への外国人観光客が増えているという。また、2020年の東京オリンピック開催決定を受け、我が国には海外からの熱い視線が益々注がれる気配を感じさせる。
本書には、そうした我が国の次の基幹産業ともいうべき観光産業の道標が描かれている。白書の名の通り「観光ビジネス」を77分野に分類し、その分野別の最新データに基づく「現状」と、コンサルタントによる分析を加えた「未来戦略」により観光産業の全体像が明らかされたものであり、2014年版で当初の発刊から数え5年目を迎えるものとなる。
本書を手に取りまず気づかされるのは、観光ビジネスの裾野の広さ、拡がりの大きさである。観光というと旅行・宿泊関連のビジネスが容易に思い浮かぶが、本書では観光とファッションビジネスとの関連や、学校ビジネスとの関連など、観光を軸とした他産業との関連をうかがい知ることができ、面白い。またわれわれが普段入手しにくい統計資料が最新のデータ・出典とともに明記され、資料集としても価値あるものとなっている。
現状の観光産業を俯瞰して眺めるのに適した良書であり、また一朝一夕には身につかない、きめ細かなホスピタリティや洗練されたサービスマインドの土壌を持つ我が国の観光産業の発展を期待させる一冊である。
「企業診断ニュース」2014年6月号