同友館発行の「企業診断ニュース」内で不定期連載中の「診断士の書評」コーナー。2013年9月号は、「確率を知らずに計画を立てるな」を担当いたしました。
『確率を知らずに計画を立てるな』内山力 著 PHP研究所“ビッグデータ”という言葉の流行に合わせ、データの取り扱い方法や、その企業経営における活用方法、などに関する話題を耳にする機会が多くなってきた。
また、データ分析の専門家である統計家「データサイエンティスト」は、今後10年間で最もセクシーな職業(米グーグル社、ハル・ヴァリアン氏談)として、その育成強化にも注目が集まっている。
本書は、そのようなデータ分析の基本ではあるものの、馴染みのない方には取っ付き難い「確率」という学問を、読者にわかりやすい身近なエピソードを交えて解説されたものである。
集合に始まり、標準偏差、ポアソン分布といった基礎知識を、経営に関連した事例のみならず「選挙の当選確率」や「イチロー選手の打率」といった実生活で触れる機会の多い事柄を用いて説明し確率思考の楽しさを伝える、いわば公式という「道具」とその「使用例」の説明書である。
「確率」は未来の予測に活かすことのできる学問である。企業の経営者と共に未来の経営を描く我々診断士と非常に相性のよい分野であり、そして時に高度な能力が要求される。
その点本書は、タイトルにあるような「計画の立案に活用」といった応用力の強化を期待する者にとってはいささか物足りなさを感じる。しかし読みやすく記述され、勘や経験・度胸の営業スタイルから未だ脱却できない企業の経営者には、データの重要性を説くためにもおすすめしてみたい。
「企業診断ニュース」2013年9月号